養液再利用

 

養液栽培システムにおいて作物を栽培する場合、通常植物の要求する蒸発散量の30~50%余分に、培地への潅水を行います。この為、水と肥料は一部無駄になってしまいます。 soillesssubstrate 
 
しかしながら、排液は回収と一時貯蔵する事で、再利用することが出来ます。
 
養液リサイクルの利点: 水と肥料の使用量削減(50~70%)、潅水量を増やした事による収量と品質の向上、肥料の効率的利用、フラッシング効果の向上、などが挙げられます。また、耕作地への化学肥料の流出を抑制し、環境に優しい栽培体系を構築できます。 
 
主な課題
 
化学的な側面
養液には、植物の生育にあまり必要の無い塩化物、その他の要素が含まれています。閉鎖型の潅水システムでは、時間の経過と共に、これらの要素が蓄積されていく事になります。
それらが一定の濃度以上になると、作物によっては、生育に悪影響を及ぼす可能性があります。トマトでは比較的影響が少なく、バラではシビアに影響する等、これらの作用性は作物によって異なります。
植物病理学的側面
糸状菌や細菌類、線虫、ウイルスが一部に感染したものが、システム全体に拡散し、病害が蔓延する可能性があります。
 
養液リサイクルの方法

 

  • 養液栽培システムから出た排液を、隣接する露地栽培に利用する方法
  • 排液を循環再利用する閉鎖型システム(排液をそのまま利用するタイプと消毒して利用するタイプの二方法がある)
  • 排液を雨水または真水で薄めて再利用する方法
  • 2/3:1/3法: 温室全体の2/3の面積に潅水を行い、排出された排液を残り1/3の区画の潅水に利用する方法(バラでよく行われる)
一般的な殺菌方法
 
1. 生物ろ過
コルゲートタンクに砂や2mm径の火山灰性礫をろ材として満たして生物ろ過器を構成し、排液を一定の速度で通します。ろ材に定着した有用菌の働きで、病害菌を分解する事で養液を殺菌します。主な問題点は、目詰まりを起こしやすく、処理流量が変化しがちな事です。
 
2. 塩素消毒
排液に塩素ガスを投入して殺菌する方法で、殺菌効果は養液の濁度や塩素の活性濃度、接触時間、処理水の酸度(pH:5.5~6.5が良い)によって異なります。
塩素濃度3ppmで30分間の処理がウイルスを含む、広い範囲の病原の消毒に効果的である事が知られています。養液中に塩素分が1ppm残っていると、植物に害を及ぼす為、塩素成分の残渣が無い様に管理する必要があります。従って、殺菌処理後、残留塩素が分解するまで時間を置く必要があります。
 
3. 過酸化水素 
過酸化水素は、水と活性酸素に分解して強力な酸化作用を示し、有機化合物を分解する、非常に効果的な殺菌剤として利用されています。過酸化水素は容易に、かつ完全に水に溶け、有毒な残留物を生じず、特定のpHや温度に依存しません。
紫外線照射を伴うと、過酸化水素はフォト・フェントン効果と言われる、ヒドロキシフリーラジカルを生成します。
 
4. 紫外線殺菌
紫外線による排液の殺菌効果は、病原の種類に応じて選択された紫外線ランプの電圧に依存します。殺菌効果は処理水の濁度に影響されるので、処理前に懸濁粒子をろ過しておく必要があります。紫外線照射によって、種々のキレートが分解されるので、殺菌後の養液調製時には、特に鉄などの微量要素の添加が必要になります。UVランプが汚れると、殺菌効果が減少する為、ランプは常に清掃する必要があります。
 
5. 熱殺菌
熱交換器を通して処理液を過熱殺菌する方法で、全ての病原を殺菌するには、90℃で30秒、または85℃で3分間処理する必要があります。60℃、2分の処理ではバクテリア、糸状菌、線虫のみ有効です。熱殺菌処理された養液は、一旦熱交換器に通して温度を下げてから、使用します。この方法は、非常に効果的で、植物体に害を及ぼしませんが、燃料代のコストがかかるのが難点です。