オーストラリア発: 地中点滴潅水の利用がサトウキビの水及び窒素の吸収に及ぼす効果

(参考記事)
Relevant: サトウキビ

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO(1))及び持続可能な砂糖生産の為の産官学共同研究センター(CRC(2))による記事要約

ネタフィムユニバーシティ提供

 
P. ソーバーン、J. ビッグス、K. ブリストー、H. ホラン、N. フート

オーストラリア・クイーンズランド州タウンズビル

 
オーストラリアにおける製糖産業は主として北東沿岸部に位置しており、グレートバリアリーフや地方都市のような環境問題に繊細な地域に近接している事から、環境に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。この為、水と肥料の利用の効率化がとりわけ重要となる。1990年代には、点滴潅水によるサトウキビの栽培面積は約1000ヘクタールから4000ヘクタールへと4倍に増加したが、それでも灌漑を行ってサトウキビ栽培を行っていた圃場全体の2%未満でしかなかった。これまでは、灌漑利用効率には無駄が多く、肥料、特に窒素の利用効率が悪かった。
地中点滴潅水を利用する事で、サトウキビの窒素施用量は従来法より2550%も減少したであろう。
 
本研究では、農業生産シミュレーションモデル(APSIM)を改良修正し、その性能を試験結果と比較評価し、しかる後に地中点滴施肥潅水の長期的効果を評価する事を目的とした。
評価モデルに供せられる試験サトウキビ品種(品種名;Q124)の植え付けを9月に行った。日々の潅水には、地中0.3mの深さに埋設した点滴チューブを使用した。0から240kg/ha5段階の窒素(尿素)施用区に分けて植え付けた茎片に施肥潅水して出芽させ、苗となってからは各区の施用窒素量を75%とした。施用区の一つは、従来法と同様の窒素施用量とした。栽培試験は10年間(17作)行った。
 
上記のモデルはサトウキビの絶対的収量を予測するが、その予測値は潅水や施肥だけでなく、収穫ロスや病害虫による被害、土壌状態の悪化(酸素不足)による根痛み、倒伏被害などに影響を受ける実際の圃場における収量とよく一致する。しかしながら、窒素0施用区に対する相対的収量は、試験とシミュレーションの両方で同様であった。この様に修正されたモデルにより、長期間に渡る地中点滴施肥潅水で、サトウキビがどの位窒素を吸収するかを知る事が出来る。さらに、従来法に比べて地中点滴施肥潅水は窒素の利用効率を格段に高める事が明らかになった。17作の栽培試験で、点滴施肥潅水によると窒素の使用量が1040%削減できた。この研究で行ったシミュレーションでは、地中点滴施肥潅水は窒素量を節約して同等の収量を得る、又は従来と同じ窒素投入量で増収を得る、のいずれかは実現できる事を示唆している。どちらの効果を期待するかは、経済性を重視するか、収量性を重視するかに関わってくる。
 

環境保護または資源保護のいずれかの面で、水利用効率と施肥効率が問題となる時、サトウキビ栽培の灌漑において地中点滴施肥潅水こそ選択すべき方法であることが、この10年間の研究で明らかになった。

 

(1) CSIRO (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization) オーストラリアの国立科学研究機関

(2) CRC (Cooparative Research Centers Program) オーストラリア政府の共同研究センターのプログラム下で1995年に設立され、2003年にその公式的役割を終えた

 

キーワード:農業生産、シミュレーションモデル、地中施肥潅水、地中点滴潅水、サトウキビ収量、細流灌漑(点滴潅水)、収量

地理的用語:オーストラリア、クイーンズランド

Site by NGSoft.
Remember my preferences